2005年11月26日
なぜか主題ではなく副題に沿った内容のお話だったのですが、
複雑系・カオス理論を使った現状の読み解き方、
今後の政策や臨床医教育のありかたについてのお話はとても勉強になりました。
以下に内容をご紹介します。
平成17年度第2回 病院経営セミナー
精神科医療の変革と病病・病診連携〜論理的に医療政策を考える
講師:医療法人愛精会
あいせい紀年病院 理事長 森 隆夫 氏
1.昔と今の精神科医療
戦後からの精神医療は、行政の方針として『収容』を主とするものであった。
それによって、入院数を増やせば、病院は採算が取れる仕組みになり、
巨大化した箱物(ハード・施設)が作られ、治療内容ではなく、
入院数に依存した医療経済が確立してしまった。
しかし、現在は強制力をもった治療や看護の実態がマスコミによって批判され、
医療費が破綻した国の経済を圧迫していることから、
ノーマライゼイション(障害者など社会的にハンディキャップのある人が、
そのあるがままでの姿で、人々と同じように生活し、活動することのできる社会を
目指すという考え方)が行政によって提起された。
とはいえ、精神病患者による(と思われる)事件が起これば、
マスコミは「何故、社会に出したのだ」と批判し、
国は診療報酬の削減などにより、入院すべき患者まで退院させるよう誘導した。
ここに、戦後連綿と続いてきた精神化医療政策と現在の方針の矛盾が
現場で噴出するようになってしまったのである。
2.複雑系とは−その脱却を目指すには−
複雑系とは…
たくさんの要素が相互に関係性を持ちつつ独自の行動ルールで動き、
かつ他の要素とのやりとり経験から自分の行動ルールを変えるシステム。
という科学分野の思考方法です。
現在の医療は、患者中心でありたいという医療側の要望と、
市場開放を求める外圧、財源論を唱える国の方針が絡み合い、複雑系になっている。
3.複雑系からの脱却−カオス理論の応用
カオス理論とは…
ほんのわずかな初期条件の違いが予想もつかないほど大きく違った結果を生む現象。
この理論を応用する事によって、現在の複雑な現象を簡単な法則から導き出す事が可能になる。
ポイント1 本質を見る→物事を単純化する
ポイント2 視点を変える→思い込みを修正する
つまり、病院内の採算や国外からの外圧、国の予算不足に囚われるのではなく、
『患者さんを中心に』考えることが大切。
例)コスト教育
・薬価の高い薬剤を使わない
・特に包括病棟では、薬価の安い薬物しか使わない
↓↓↓
・その薬を使ったとき、患者さんはどのくらいお金を払っているのか
・それに見合う治療を提供できているか
・その療法は患者さんにとって最も利益のあるものであるという自信はあるか
これらを意識する事で病院の利益に結びつくコスト感覚が身についていく
4.視点を変えたexample
ア. メンタルヘルスと連携について
イ. 政策について
ウ. 臨床医教育について